債務不履行とは
取引先と契約した場合、当事者は、約束した義務を果たす必要がありますが、その義務が果たされない場合には、債務不履行による損害賠償の問題が発生します。
具体的には、売買契約で購入した商品が納入されない、請負契約で約束した工事が期限までに完成せずに遅れた、など、契約で約束したことが守られないことで、何らかの損害が生じた場合の問題です。
このように約束違反により損害を被った場合は、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができます。
債務不履行に基づく損害賠償については、民法415条1項に、
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定されています。
「債務の本旨に従った履行をしないとき」の典型は、約束の期限が来ても履行しない場合(履行遅滞)です。
契約した商品を納入しない、代金を支払わないなど、期限までに約束が果たされない場合には損害賠償の責任が問題になります。
「債務の履行が不能であるとき」とは、社会通念に照らしてその約束を果たすことができなくなっている場合(履行不能)を意味します。
借りていたテナントを失火で焼失してしまい、賃貸人に返還する債務を履行できなくなったケースのように、もはや約束を果たせなくなってしまうと、損害賠償の問題が生じます。
帰責事由
債務を履行することができない場合でも、「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき」は、責任を負うことはないとされています。
例えば、大地震で交通網が遮断され、約束の期限に商品を引き渡すことができなかった場合などがあります。
損害賠償額
債務不履行によって損害賠償の責任が発生するとして、どのような範囲で賠償をしなければいけないのでしょうか。この損害賠償の範囲を定めているのが、民法416条です。
この条文は、「①債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。②特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」と定めています。
この条文は、「通常損害」と「特別損害」を規定していると理解されています。
通常損害とは、その種の債務不履行があれば、通常発生するものと社会一般で考えられる範囲の損害です。例として、売主が商品を引き渡さなかった場合に、買主が高い値段で代わりの商品の調達を強いられた場合の損害などがあります。
特別損害とは、特別の事情によって生じた損害で、これは契約の当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償されることになります。例として、売主が商品を引き渡さなかった場合に、買主が既に結んでいた転売契約を履行できずに転売利益を失ったという損害などがあります。
時効
債務不履行による損害賠償請求ができるとしても、請求しないまま長期間経過すると、時効により請求できなくなります。
民法では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」は、債権は時効で消滅すると定めていますので、損害賠償請求する場合には、速やかに行うことが必要です。
対応について
債務不履行の問題は、不履行があったといえるのか、責任があるとしてどの程度まで損害賠償しないといけないか等、法的に検討が必要です。
損害賠償請求を検討している、請求されて困っている等、損害賠償の件でお悩みの場合は、お早めに当事務所にご相談ください。
Last Updated on 2023年1月20日 by kigyou-sugano-law