現代の労働市場では、無期転換ルールが重要なトピックとなっています。特に企業経営者や法務部門担当者にとっては、この改正が定年や再雇用ポリシーにどのような影響を与えるかがみなさま気にされていることのひとつです。このコラムでは、「無期転換ルールとは」何か、そしてこれが定年後の再雇用にどのように影響するかを詳しく解説します。
無期転換ルールとは?
無期転換ルールとは、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、労働者が希望すれば無期雇用(正社員など)への転換を求めることができる法的な規定です。このルールは、パートタイム、契約社員、派遣社員などの非正規雇用者の雇用安定化を目指して導入されました。
無期転換後の労働条件は?
無期転換がなされた後の労働条件については、労働契約法18条1項にて、就業規則などに別段の定めがなければ、従前の有期雇用契約と同一の条件となることが規定されています。
会社としては、無期労働契約に転換された労働者に対して、どのような労働条件を適用するかを検討し、適用する就業規則にその旨を規定する必要があります。
定年後再雇用における無期転換ルールについて
例えば、正社員が60歳定年後に再雇用され、有期契約を更新して雇用を継続しているような場合でも、無期転換ルールは適用となります。
もっとも、このような定年後再雇用のケースでは、都道府県労働局長の認定を受けることで無期転換申込権が発生しない、とする特例が設けられています(「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」という法律による特例です。)。
認定を受けるためには、都道府県労働局に対し申請を行う必要があります。
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定年を超えた後に無期転換した場合は?
60歳前から有期労働契約により雇用され、更新の過程で60歳の定年年齢を超えた場合は、その従業員は定年退職したわけではないため、上記の特例の対象とはなりません。
このように、有期契約労働者が、契約更新されて企業において定めている定年の年齢(例えば60歳)を超えた場合でも、無期転換ルールは適用となります。
そこで、就業規則等で、このような場合の定年をどうするのか、現実の雇用状況を踏まえて定めておく必要があります。
これらを検討することは、会社におけるそれまでの定年制度を見直し、より柔軟な雇用形態を検討することにも繋がると思われます。
令和3年4月1日から施行されている改正高年齢者雇用安定法は、70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではありませんが、70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき努力義務を定めておりますので、企業としても高年齢者がその能力を十分に発揮できるような制度の構築が必要になるでしょう。
無期転換ルールについてはまずは弁護士までご相談ください
無期転換ルールの改正に伴う定年や再雇用制度の見直しは、企業にとって複雑な法的課題を含むため、企業法務に精通した弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、無期転換ルールの適用、就業規則の変更、労働契約の見直しなど、法的な側面から適切なアドバイスを提供し、企業のリスク管理を支援します。
無期転換ルールの適切な理解と対応は、企業が持続的な発展を遂げるために不可欠です。企業経営者や法務部門担当者は、この変化に対応するための正確な情報と専門知識を持つことが、企業の将来にとって重要な鍵となります。法的な不確実性を最小限に抑え、企業が安定した運営を続けるために、専門家のサポートを利用してください。
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Last Updated on 2024年2月12日 by kigyou-sugano-law