請負契約書とは?作成方法や注意点を弁護士が解説

経営者の方々から「請負契約書を作成する際に気を付けるべき点は何か」「弁護士に依頼するメリットはあるのか」というご相談を多くいただきます。特に、工事やシステム開発などの取引で請負契約書を締結する必要性が増しており、契約書の重要性を改めて実感する経営者の方も少なくありません。

この記事では、請負契約書の基本的な知識から作成方法、注意点、業務委託契約との違い、弁護士に依頼するメリットまで、幅広く解説します。請負契約書の作成や締結に悩む経営者が、安心して取引を進めるための知識を身につけていただける内容です。

この記事を読むことで、請負契約書がどのような場面で必要なのか、作成の流れやチェックポイント、契約内容に変更があった際の注意点などを理解できます。特に、初めて請負契約書を作成する経営者や、過去に請負契約で問題が生じたことがある経営者の方には、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

請負契約書とは?

請負契約書とは、特定の仕事の完成を目的とした契約書であり、仕事が完成した際に報酬を支払うことを定めるものです。例えば、建築工事やホームページ制作、ソフトウェア開発など、完成した成果物が存在する取引では、必ずと言ってよいほど請負契約書が締結されます。請負契約書は、仕事の内容や報酬、納期、責任範囲などを明確にすることで、双方の役割や義務を整理し、安心して取引を進めるために不可欠な書類です。

例えば、新店舗の内装工事を依頼する際に、業者との間で請負契約書を作成し、工事内容の詳細、引き渡し期限、遅延時の対応、支払い方法などを具体的に記載すれば、結果として、スムーズに工事が進み、予定通り開業を迎える可能性が高まります。

このように、請負契約書は事前にリスクを回避し、安心して業務を任せるための土台となります。

請負契約書を作成せずに口約束だけで進めてしまうと、完成基準や責任の所在が曖昧になり、後々大きな問題に発展する可能性があります。特に、工事や制作が途中で頓挫した場合や、品質に不満がある場合には、契約書がなければ責任追及が困難です。

経営者としては、取引の規模や金額にかかわらず、請負契約書をしっかり作成することが重要です。弁護士が関与することで、取引内容や業種に応じた最適な内容を設計でき、不要なリスクを防ぐことができます。

請負契約におけるよくあるトラブル

請負契約書は、仕事の完成と報酬の支払いを明確にする重要な契約書ですが、実際の取引現場では、請負契約に関するトラブルが多く発生しています。請負契約書を適切に作成していなかったことが原因で、事業に大きな損害が出たケースも少なくありません。ここでは、弁護士として現場でよく相談を受ける典型的なトラブルを紹介し、それぞれの予防策について解説します。

納期遅延による損害発生

請負契約書に納期が明確に記載されていない、または遅延時の対応が定められていない場合、仕事の完成が遅れた際に深刻な問題になります。例えば、私がご相談を受けた飲食店の内装工事では、納期の合意が明確ではなく、オープン予定日に間に合わず、遅れたことで家賃や人件費が無駄に発生し、多額の損失が発生していました。

その点をめぐって訴訟にまで至ったのですが、もし、契約段階で弁護士にご相談を受けていれば回避できたトラブルだったことが悔やまれます。

仕事の完成基準が曖昧

請負契約書に「完成」とは何かが明記されていない場合、どの段階で報酬を支払うべきか、どの程度の品質で完成と認めるかを巡って争いになります。例えば、ホームページ制作の請負契約で、発注者は「SEO対策まで含めた集客力のあるサイト」を想定し、受注者は「ページが表示されれば完成」と考えていると、納品後のトラブルにつながります。

弁護士が事前にチェックしていれば、完成基準を細かく設定し、双方の認識を一致させることができます。

瑕疵対応が不十分

完成した仕事に欠陥があった場合、請負契約書で瑕疵担保責任について定めていなければ、補修や修理を求めるのが難しくなります。特に建設工事やシステム開発では、一定期間は不具合が出る可能性があるため、契約書で瑕疵対応の範囲や期間を明記することが不可欠です。

報酬の未払い・過剰請求

請負契約書で報酬額や支払い時期が明確でない場合、未払いトラブルや追加費用の過剰請求が発生します。例えばイベント設営の請負契約で、追加工事が発生した際に見積書の取り交わしをしていないと、後から多額の追加請求を受ける可能性があります。弁護士としては、追加業務が発生した場合の手続きを契約書で定めておくことを推奨しています。

契約解除の条件が不明確

請負契約書で解除条件が曖昧だと、途中で契約を解除したい場合や、相手方の不履行があった際にスムーズに対応できません。例えば、工事の進捗が遅れていても、解除の条件が定められていないために、余計な損失が拡大することがあります。弁護士が関与すれば、解除事由や手続きについて明確に条文化でき、リスクを低減できます。

このようなトラブルは、決して特別なものではありません。請負契約書の作成や締結を安易に考えると、後で取り返しのつかない事態になりかねないのです。弁護士が請負契約書の作成やチェックに関与することで、こうしたリスクを事前に把握し、具体的な予防策を講じることができます。

業務委託契約との違い

請負契約書と混同されやすい契約に「業務委託契約」があります。実際に経営者の方から「請負契約書と業務委託契約書の違いが分からない」「どちらを使うべきか迷う」といったご相談を受けることが非常に多いです。ここでは、弁護士の立場から、両者の違いや注意点をわかりやすく解説します。

業務委託契約書とは?作成方法や注意点を弁護士が解説

請負契約書と業務委託契約書の根本的な違い

請負契約書は、仕事の完成を目的とした契約です。成果物の完成が契約の成立要件であり、完成した成果物に対して報酬が支払われます。例えば、内装工事、ウェブサイト制作、アプリ開発などが請負契約の典型です。請負契約書では、完成物が不完全だった場合や瑕疵があった場合に、修補や損害賠償を求められることが大きな特徴です。

一方、業務委託契約書は、特定の業務を遂行すること自体を目的とした契約で、必ずしも成果物の完成が求められるわけではありません。例えば、経理業務の代行、コンサルティング業務、受付業務のアウトソーシングなどが業務委託契約に該当します。業務委託契約書では、瑕疵責任ではなく善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)に基づいて業務を遂行する義務が求められるのが一般的です。

判断に迷う場合は、弁護士が関与して適切に仕分けることをおすすめします。契約の分類を誤ると、報酬の支払いタイミングや責任範囲が曖昧になり、万が一の際に適切な対応ができなくなります。

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請負契約書の作成の流れ

請負契約書は、単にひな形を利用するだけでは不十分です。取引の実態に合わせて適切に作成することが求められます。実際に私が支援している経営者の方々も、「請負契約書の作成の流れが分からず不安」「弁護士にどのタイミングで相談すべきか迷う」といった声を多く寄せられています。ここでは、弁護士が関与する際の請負契約書の作成の流れを具体的にご紹介します。

ヒアリングで取引内容とリスクを整理する

請負契約書作成の第一歩は、弁護士によるヒアリングです。この段階では、経営者がどのような仕事を依頼するのか、その目的や背景、取引先の特徴、これまでに経験したトラブルの有無などを詳しく伺います。

例えば、飲食店の内装工事案件では、以下の情報を整理が考えられます。

工事の範囲(内装・電気・設備)

完成期限(開業日に間に合うことが絶対条件)

報酬額と支払いスケジュール

遅延が生じた場合の損害補填

ヒアリングによって、何を請負契約書で明確にすべきかが具体化します。この段階を丁寧に行うことで、後々のトラブルを防ぐことができるのです。

条文設計とドラフト作成

ヒアリングをもとに、弁護士が実際に請負契約書の条文を設計し、ドラフトを作成します。ここで重要なのは、単に一般的な条文を並べるのではなく、個別事情に合わせてカスタマイズすることです。

先ほどの内装工事の事例では、特に以下の条文を工夫することが考えられます。

納期遅延に対する違約金の設定

完成検査の基準を明確化

瑕疵発覚時の補修義務とその費用負担の明記

これにより、開業前の工事遅延や欠陥工事といったリスクを契約書上で防止できる設計になります。

相手方との調整と修正対応

弁護士が作成したドラフトを相手方に提示した後、修正の提案や確認が入ることが一般的です。特に報酬額や納期、追加工事の取り扱いについては、相手方から変更要望が寄せられることも多くあります。

この交渉過程では、弁護士が法的リスクを踏まえた上で、経営者の立場を守る調整を行います。

交渉を弁護士がサポートすることで、不要な譲歩を防ぎ、最適な契約内容に仕上げることが可能になります。

締結と管理

双方で合意した最終版の請負契約書を締結します。書面での署名押印はもちろん、最近では電子契約システムを使ってオンライン締結するケースも増えています。

締結後は、契約書の管理も重要です。特に納期や瑕疵担保期間など、日付が関係する項目については、管理台帳で期限を把握し、必要に応じて更新や再確認を行います。弁護士が契約管理のアドバイスまで行うことで、締結後のトラブル防止まで見据えたサポートが可能です。

このように、請負契約書の作成は単なる書面の作成作業ではありません。取引内容やリスクを正確に整理し、最適な条文設計を行い、交渉や締結、管理まで一貫して進めることが、事業の安全を守るためには不可欠です。

契約書内容に変更が出た際の注意点

請負契約書を締結した後、取引の途中で契約内容を変更したくなる場面は決して珍しくありません。「追加工事が発生したが契約をどう修正すればいいか」「納期を延長したいが、どのように対応すべきか」という悩みが発生することがあります。しかし、契約書の変更を曖昧なまま進めてしまうと、後に大きな問題に発展する可能性が高くなります。そこで、請負契約書の内容変更時に注意すべきポイントを、弁護士の視点から解説します。

必ず書面で合意内容を残す

契約変更で最も多い問題は、口頭での合意で済ませてしまうことです。現場でのやりとりや電話で「これでお願い」と話がまとまったとしても、書面化されていなければ証拠が残らず、後から「言った・言わない」の争いになるリスクが高まります。

例えば、内装工事の請負契約において追加の壁面装飾を依頼したとして、口頭で追加費用を確認して作業が進めると、完成後に「そんな金額は聞いていない」と請求額で揉める可能性があります。弁護士が関与していれば、追加合意書を作成し、変更内容を明確に残すことができた事例です。

契約変更時には、次の内容を含む書面を取り交わすことが重要です。

変更内容の具体的な記載(工事内容や範囲)

追加費用や支払い方法

変更による納期への影響

双方の署名押印

書面化することで、後々の証拠として有効になり、安心して作業を進めることができます。

契約変更によるリスクを再確認する

契約内容を変更すると、当初は想定していなかったリスクが発生することがあります。特に、納期延長や追加工事が発生した場合、完成が遅れることで事業全体に影響を及ぼすケースもあります。

弁護士が関与すれば、変更による法的リスクを事前に整理し、必要な条項を追加することで、リスクの最小化を図ることが可能です。

変更履歴を正確に管理する

複数回にわたり契約内容を変更する場合、どのタイミングで何を変更したのかが分からなくなることがあります。これを防ぐためには、契約変更ごとに日付を明記した合意書を作成し、管理台帳で履歴を一元化することが重要です。

契約変更は避けられない場合もありますが、対応次第でリスクを最小限に抑えることが可能です。特に請負契約書は、金額や納期が大きな影響を持つため、慎重に対応し、弁護士のサポートを受けながら確実に手続きを進めることが重要です。

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請負契約書の作成を弁護士に依頼するメリット

請負契約書を自社で作成する企業も少なくありませんが、取引の規模や内容が複雑になるほど、弁護士に作成やチェックを依頼する重要性は増します。

ここでは、請負契約書の作成を弁護士に依頼するメリットを具体的に解説します。

実態に即したオーダーメイド設計ができる

インターネット上には請負契約書のテンプレートが数多く存在します。しかし、それらは一般的な内容であり、実際の取引や業種特有のリスクに対応しているわけではありません。弁護士に依頼すれば、取引内容、金額、業種、関係性などを考慮し、実態に即した条文設計が可能です。

取引先との交渉を有利に進められる

請負契約書の作成過程で取引先から修正を求められることはよくあります。特に、契約金額が大きい場合や立場が弱い中小企業では、相手方の要求を受け入れざるを得ないと考える経営者も少なくありません。

紛争を未然に防ぎ、万が一にも備えられる

トラブルが発生してからでは、損害や信用低下の影響は計り知れません。弁護士が関与して請負契約書を作成することで、トラブルの予防策を講じることができ、万が一の事態にも備えることが可能です。

締結後の管理・運用までサポートできる

請負契約書は、締結した後の管理も重要です。納期や瑕疵担保期間、支払いスケジュールなど、期間管理が甘ければ契約の効力を十分に発揮できません。弁護士が関与していれば、契約後の運用アドバイスや変更対応、紛争対応までトータルでサポートすることができます。

このように、弁護士に請負契約書の作成を依頼することで、事前のリスク予防から、交渉・締結・管理・紛争対応まで、一貫した安心を提供することが可能です。

請負契約書は、事業を安全に進めるために欠かせない重要な契約書ですが、実際の取引内容や業界特有のリスクに対応せず、ひな形や過去の契約書を流用しているケースが多く見受けられます。その結果、納期遅延や追加工事、瑕疵発覚、報酬トラブルといった問題が発生し、経営に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

経営者の方々から「請負契約書を作成する際に気を付けるべき点は何か」「弁護士に依頼するメリットはあるのか」というご相談を多くいただきます。特に、工事やシステム開発などの取引で請負契約書を締結する必要性が増しており、契約書の重要性を改めて実感する経営者の方も少なくありません。

この記事では、請負契約書の基本的な知識から作成方法、注意点、業務委託契約との違い、弁護士に依頼するメリットまで、幅広く解説します。請負契約書の作成や締結に悩む経営者が、安心して取引を進めるための知識を身につけていただける内容です。

この記事を読むことで、請負契約書がどのような場面で必要なのか、作成の流れやチェックポイント、契約内容に変更があった際の注意点などを理解できます。特に、初めて請負契約書を作成する経営者や、過去に請負契約で問題が生じたことがある経営者の方には、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

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Last Updated on 2025年3月23日 by kigyou-sugano-law

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