
企業が労働者を雇用する際に交わす雇用契約書は、双方の権利と義務を明確にし、トラブルを防ぐ重要な書類です。しかし、作成時の不備や記載漏れがあると、労働条件に関する誤解や紛争が発生する可能性があります。企業としては、雇用契約書を適切に作成し、適法かつ公正な労働環境を確立することが求められます。
本記事では、雇用契約書の基本的な役割や作成の流れ、雇用形態別の記載事項の注意点、契約内容変更時の対応方法、そして弁護士に依頼するメリットについて詳しく解説します。雇用契約書の作成や管理に不安を抱えている経営者の方は、ぜひ最後までお読みください。
雇用契約書とは?
雇用契約書とは、企業が労働者と締結する契約であり、労働条件や報酬、業務内容などを明確に定めた法的文書です。労働基準法により、企業は労働者に対して、労働条件を明示する義務があります。
適切な雇用契約書を作成することで、企業と労働者の双方が納得のいく労働関係を築くことができます。特に、賃金、勤務時間、休日、解雇に関する規定を明記し、契約の内容を明確にしておくことが、労働トラブルの防止につながります。
また、近年はリモートワークやフレックスタイム制の導入が進んでおり、雇用契約書の内容もそれに対応したものにする必要があります。企業が持続的に成長し、安定した雇用環境を提供するためにも、雇用契約書の適正な作成が不可欠です。
雇用契約におけるよくあるトラブル
雇用契約書に不備があると、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
労働条件の不一致
労働者に口頭で説明した内容と、契約書の記載が異なることで、労働者が契約内容に不満を抱くケースがあります。特に、給与や勤務時間に関する誤解が生じやすく、労働基準法違反と指摘されるリスクもあります。
試用期間に関するトラブル
試用期間の取り扱いが曖昧な場合、試用期間終了後の雇用継続の可否や解雇の正当性を巡る問題が発生します。試用期間の長さや条件、評価基準を明記し、適正に運用することが重要です。
残業代未払い問題
「固定残業代」を導入している場合、以下の点を明確にする必要があります。
・固定残業代を除いた基本給の額
・固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
・固定残業時間を超える時間外労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
実際の労働時間と契約書の内容が適合しているか、定期的に確認する必要があります。
契約更新に関する誤解
有期雇用契約の場合、契約更新の有無を明確にしていないと、労働者が「当然に更新される」と誤解し、トラブルになることがあります。更新条件を具体的に記載し、説明を徹底することが重要です。
退職・解雇時のトラブル
退職時の手続きや解雇要件が契約書に明記されていないと、不当解雇や違法な労働契約解除と判断される可能性があります。解雇事由や退職時の手続きについて、適法な範囲で明確に記載することが求められます。
雇用形態別の記載事項の注意点
雇用形態によって記載すべき内容が異なります。適切な契約書を作成することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
正社員の場合
正社員は長期的な雇用関係を前提とするため、昇給・賞与の条件や退職金制度の有無、試用期間の規定を明確にする必要があります。また、解雇要件や就業規則の適用範囲についても詳細に記載し、企業と労働者の間の認識のズレを防ぎます。
契約社員の場合
契約社員の場合は、契約期間を明確に定め、更新の可否や条件を記載することが重要です。正社員登用の可能性がある場合は、その条件を明確にし、労働者が誤解しないように説明しましょう。
アルバイト・パートの場合
アルバイトやパートの場合は、勤務時間、シフトの取り決め、残業の取り扱いを明確にする必要があります。また、交通費の支給有無や福利厚生の適用範囲、社会保険の適用基準についても、具体的に記載しましょう。
契約書内容に変更が出た際の注意点
契約内容を変更する場合は、労働者の同意を得ることが原則です。一方的な変更はトラブルの原因となるため、事前に労働者へ説明し、合意を得た上で書面に残すことが重要です。
また、変更内容は契約書の修正または追加合意書の形で記録し、双方の署名・押印を行うことで、法的な有効性を確保できます。さらに、変更が就業規則と矛盾しないよう、事前に確認を行うことが必要です。
雇用契約書の作成を弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼することで、労働基準法などの関連法令を遵守した契約書を作成でき、リスクを回避できます。また、企業の業種や雇用形態に応じたカスタマイズが可能となり、より適切な契約書を作成することができます。
雇用契約書に関するお悩みは当事務所にご相談ください
当事務所では、雇用契約書の作成やリーガルチェック、契約の見直しをサポートしております。労働環境の変化や法改正に対応した契約書の整備が必要な場合は、ぜひご相談ください。適正な雇用契約書を作成し、企業と労働者双方にとって安心できる雇用環境を実現しましょう。
Last Updated on 2025年3月24日 by kigyou-sugano-law