身体拘束とは?違法となる場合・3要件について弁護士が解説

身体拘束とは?違法となる場合・3要件について弁護士が解説

介護業界での身体拘束という問題は長年議論されており、法律的な観点からみたその複雑性を解き明かすことは重要です。このコラムでは、身体拘束に関連するテーマについて詳細に解説し、このテーマに関心のある方々に適切な情報を提供します。

身体拘束に関する法律とは?

身体拘束は、基本的には介護受け手の自由を制限する行為のことを指します。

介護保険指定基準では、「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」とされています。

ここで禁止されているのは、具体的には以下のような行為です。

① 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

④ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

⑤ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

⑥ 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、 Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。

⑧ 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

⑪ 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

身体拘束が認められる要件-3要件とは?-

介護保険指定基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を

保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められています。

しかし、認められるのは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られるのです。

3要件①「切迫性」とは?

利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。

身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要となる程度まで利用者本人等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が高いことを、確認する必要があります。

3要件②「非代替性」とは?

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと。

まずは身体拘束を行わずに介護するすべての方法の可能性を検討し、利用者本人等の生命又は身体を保護するという観点から他に代替手法が存在しないことを複数のスタッフで確認する必要があります。また、拘束の方法自体も、本人の状態像等に応じて最も制限の少ない方法により行われなければなりません。

3要件③「一時性」とは?

身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。

本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要があります。

やむを得ず身体拘束をする場合の手続きとは?

3つの要件を満たす場合にも、以下の点に配慮しなくてはいけません。

・「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、担当のスタッフ個人(または数名)では行わず、施設全体としての判断が行われるように、あらかじめルールや手続きを定めておく。

・利用者本人や家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等をできる限り詳細に説明し、十分な理解を得るよう努める。

・緊急やむを得ず身体拘束を行う場合についても、「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかを常に観察、再検討し、要件に該当しなくなった場合には直ちに解除する。

また、緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければなりません。

具体的な記録には、日々の心身の状態等の観察、拘束の必要性や方法に係る再検討を行うごとに逐次その記録を加えるとともに、それについて情報を開示し、ケアスタッフ間、施設全体、家族等関係者の間で直近の情報を共有すべきです。この記録は、施設において保存し、行政担当部局の指導監査が行われる際に提示できるようにしておく必要があります。

身体拘束と介護事故との関係とは?

介護保険制度においては、基本的に、身体拘束によって事故防止を図るのではなく、ケアのマネジメント過程において事故発生の防止対策を尽くすことにより、事故防止を図ろうとする考え方がとられています。

こうした制度の下で運営されている施設等においては、仮に転倒事故などが発生した場合でも、「身体拘束」をしなかったことのみを理由として法的責任を問うことは想定されていません。

施設としては、身体拘束以外の事故発生防止のための対策を尽くしたか否かが重要です。

身体拘束は、他の事故防止の対策を尽くした上でなお必要となるような場合、すなわち「緊急やむを得ない場合」にのみ許容されるものであり、また、そのようなごく限定された場合にのみ身体拘束をすべき義務が施設等に生ずることがあると理解されています。

なお、身体拘束自体によって利用者に精神的苦痛を与えたり、身体機能を低下させ、その結果転倒・転落等の事故などを招いたりした場合には、身体拘束をしたことを理由に損害賠償等の責任を問われることもあり得ますので、身体拘束を行う場合には必要最小限度とする配慮が必要です。

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身体拘束や介護事故における弁護士によるサポート

身体拘束や介護事故に関連する問題やトラブルが発生した場合、弁護士は以下のような方法でサポートを提供できます。

法的アドバイス

身体拘束や介護事故に関連する法的問題に関する助言を提供します。

事故時の対応

事故等のトラブルが発生してしまった場合に、関係各方とのお話し合いや交渉をサポートします。

介護業の法的トラブルについては弁護士にご相談ください

身体拘束や介護事故に関連する問題に直面した際には、法的専門知識を持つ弁護士に相談することが重要です。弁護士は、法律的観点からのアドバイスやサポートを提供し、利用者やその家族が適切な解決策を見つける手助けをします。複雑な問題を解決するためにも是非一度、当事務所までご相談ください。

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Last Updated on 2024年4月19日 by kigyou-sugano-law

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