不動産トラブルを札幌の弁護士が解説|賃料滞納・明渡し・売買トラブルへの対応

不動産は資産価値が大きく、一度トラブルが発生すると損失も大きくなりがちです。賃料の滞納が続けば毎月の収益が失われ、明渡しをめぐる交渉がこじれれば物件の活用そのものが止まってしまいます。売買や建築請負の場面でも、契約不適合責任を追及されれば多額の賠償請求につながりかねません。

こうした不動産トラブルは、初動の対応によってその後の展開が大きく変わります。この記事では、賃貸経営を行うオーナー様や不動産事業者の方に向けて、賃貸借・売買・建築請負・借地・共有といった類型ごとに、よくあるトラブルと法的な対応方法、そして弁護士に相談するタイミングについて解説します。

Contents
  1. 不動産に関するこのようなお悩みはありませんか
  2. 賃貸借に関するトラブルと対応方法
  3. 不動産売買・建築請負に関するトラブルと対応方法
  4. 土地・借地・所有権に関するトラブルと対応方法
  5. 不動産トラブルを弁護士に依頼するメリット
  6. トラブルを未然に防ぐための予防法務
  7. 不動産トラブル解決までの流れと弁護士費用
  8. 札幌の不動産トラブルはすがの総合法律事務所へ

不動産に関するこのようなお悩みはありませんか

賃貸経営で起こりやすいトラブル

賃貸物件を所有・管理されている方から、次のようなご相談を多くいただきます。

  • 入居者が家賃を数か月分滞納しているが、どう対応すればよいかわからない
  • 滞納が続いているテナントに退去してもらいたい
  • 建物の老朽化に伴い建替えを予定しており、入居者に立ち退いてもらいたい
  • 周辺相場と比べて賃料が低すぎるため、増額したいが応じてもらえない
  • 退去時の原状回復費用について、借主と折り合いがつかない
  • 連帯保証人に請求したいが、連絡がつかない

賃貸借契約は借地借家法によって賃借人が手厚く保護されているため、貸主側の思うように話が進まないケースが少なくありません。「賃料を1か月滞納したのだから契約を解除できるはずだ」と考えて一方的に対応してしまうと、かえって貸主側が責任を問われることもあります。

不動産売買・建築請負で起こりやすいトラブル

売買や建築の場面では、引渡し後に問題が表面化することが特徴です。

  • 引き渡した建物について、買主から「雨漏りがする」「契約と違う」と責任を追及された
  • 買主が売買代金を支払わないまま物件を使用している
  • 発注した工事に施工不良があり、補修を求めたいが応じてもらえない
  • 工期が大幅に遅延し、事業計画に支障が出ている
  • 仲介業者の説明に問題があり、契約後にトラブルとなった

土地・借地・共有名義に関するトラブル

土地そのものに関する紛争や、権利関係が複雑化しているケースもあります。

  • 隣地所有者と境界について意見が食い違い、売却手続きが進まない
  • 相続によって親族と共有状態になった不動産を処分したいが、話がまとまらない
  • 借地人から契約の更新を求められているが、土地を返してもらいたい
  • 隣地から樹木や建築物が越境している
  • 屋根からの落雪により隣地に損害が生じた、または生じさせられた

いずれのトラブルも、放置している間に証拠が失われたり、権利行使の期間制限が経過してしまったりするリスクがあります。まずは現状を法的に整理することが解決への第一歩です。

賃貸借に関するトラブルと対応方法

賃料の滞納・未払いへの対応

賃料滞納は、賃貸経営において最も頻度の高いトラブルです。対応の基本は「早期の督促」と「解除に向けた証拠の積み上げ」の2点にあります。

まず押さえておきたいのは、滞納があれば直ちに契約を解除できるわけではないという点です。賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であるため、解除が認められるためには「信頼関係が破壊された」といえる程度の事情が必要とされています(信頼関係破壊の法理)。実務上、目安として3か月程度の滞納が一つの基準とされることが多いものの、滞納の経緯や過去の支払状況、賃借人の態度などを総合的に判断されます。

そのため、滞納が発生した段階から次のような対応を段階的に行い、記録を残しておくことが重要です。

  1. 電話・書面による督促:滞納初期の段階で速やかに連絡し、支払期日を確認します。やり取りの記録は必ず残します。
  2. 連帯保証人への通知・請求:連帯保証人がいる場合は早期に状況を通知します。個人が保証人となる契約では、極度額の定めがなければ保証契約自体が無効となる点にも注意が必要です(2020年施行の改正民法465条の2)。
  3. 家賃保証会社への請求:保証会社を利用している場合は、契約で定められた手続きに従って速やかに代位弁済を求めます。
  4. 内容証明郵便による催告:一定期間を定めて支払いを催告し、期間内に支払いがなければ契約を解除する旨を通知します。この書面が、後の訴訟において解除の有効性を裏付ける重要な証拠となります。

なお、賃借人が任意に退去しない場合であっても、貸主が自ら鍵を交換したり、室内の荷物を運び出したりすることは自力救済として違法と評価され、損害賠償責任を負うおそれがあります。必ず法的手続きによって進める必要があります。

建物明渡し請求と立ち退き料の考え方

明渡しを求める場面は、大きく「賃借人に契約違反がある場合」と「貸主側の事情による場合」に分かれます。

賃借人の契約違反による明渡しは、賃料滞納や用法違反(無断転貸、無断改築、契約で禁じられた用途での使用など)を理由とするものです。上記の催告・解除の手続きを経たうえで、任意の交渉で退去に至らなければ、建物明渡請求訴訟を提起し、判決を得て強制執行を行うという流れになります。訴訟から強制執行完了までは、おおむね半年から1年程度を見込んでおく必要があります。

貸主側の事情による明渡しは、建物の老朽化や建替え、自己使用の必要性などを理由とするものです。期間の定めのある契約であれば、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知を行い(借地借家法26条1項)、かつ「正当事由」が認められることが必要です(同法28条)。期間の定めのない契約の場合は、解約の申入れから6か月の経過によって終了しますが(同法27条1項)、この場合も正当事由が必要である点は変わりません。

正当事由の有無は、貸主・借主双方の建物使用の必要性、これまでの経過、建物の現況などを総合考慮して判断され、立ち退き料の提供はこれを補完する要素として位置づけられます。

立ち退き料の金額に法定の基準はありませんが、実務上は移転費用、造作・内装への投下資本、借家権価格、営業用物件であれば営業補償などを積算して算定されます。相場は物件の用途や立地によって大きく異なるため、「相場いくら」という一般論ではなく、個別事情に応じた見積もりが不可欠です。

建替えを予定している場合は、計画の相当程度前から準備を始めることをお勧めします。交渉に時間を要することを前提としたスケジュールを組むことで、結果的に立ち退き料を抑えられるケースも少なくありません。

定期建物賃貸借による明渡しリスクの予防

ここまで見てきたとおり、通常の建物賃貸借(普通借家)では、貸主側の事情で契約を終了させるために正当事由が必要となり、立ち退き料の負担も生じ得ます。この負担をあらかじめ回避する手段が、定期建物賃貸借(借地借家法38条)です。

定期建物賃貸借は、契約で定めた期間の満了によって更新されることなく確定的に終了する契約です。正当事由は不要であり、将来の建替えを予定している物件や、一定期間だけ貸したい物件では、明渡しをめぐる紛争そのものを契約設計の段階で防ぐことができます。普通借家では認められない1年未満の期間を定めることも可能です。

もっとも、要件を満たさなければ通常の建物賃貸借として扱われ、更新がないという効果は生じません。次の点を確実に押さえる必要があります。

  • 公正証書等の書面(またはその内容を記録した電磁的記録)によって契約すること
  • 契約書とは別個の書面(または賃借人の承諾を得た電磁的方法)をあらかじめ交付し、更新がなく期間の満了により終了する旨を説明すること
  • 期間が1年以上である場合には、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了により終了する旨を賃借人に通知すること

とりわけ注意したいのが、2点目の事前説明です。判例は、この説明のための書面は契約書とは別個独立の書面でなければならないとしており、契約書の一部に説明条項を設けただけでは要件を満たしません。この場合、更新がない旨の定めが無効となり、普通借家として扱われることになります。形式面の不備が、そのまま契約の効果を左右する領域です。

また、居住用の建物で床面積が200平方メートル未満のものについては、転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難となった場合に、賃借人から中途解約を申し入れることができるものとされています。この規律に反する賃借人に不利な特約は無効です。

賃料増額・減額請求への対応

賃料は契約時に定めた金額が原則として継続しますが、契約期間が長期にわたると、近隣相場の変動や固定資産税など公租公課の増減により、当初の賃料が実情に合わなくなることがあります。

借地借家法では、一定の要件のもとで貸主からの賃料増額請求、借主からの賃料減額請求が認められています(同法32条)。ただし、請求すれば当然に賃料が変わるわけではなく、当事者間で合意できない場合は、まず調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。調停でもまとまらなければ訴訟に移行し、不動産鑑定などによって適正賃料が判断されます。

貸主として増額を求める場合、近隣の類似物件の賃料水準、公租公課の推移、消費者物価指数の変動など、客観的な資料を準備することが説得力につながります。逆に借主から減額請求を受けた場合には、その根拠が妥当かを検証したうえで対応方針を決めることになります。

なお、増額請求が争われている間、借主は自らが相当と考える額を支払えば足りるとされていますが、最終的に判決等で増額が認められた場合には、差額に年1割の割合による利息を付して支払う義務が生じます。

これと対になる規律として、借主から減額請求を受けて争っている間、貸主は自らが相当と考える額の賃料を請求することができます。ただし、最終的に判決等で減額が認められた場合には、受け取りすぎた額に年1割の割合による利息を付して返還する義務が生じます。係争中の受領額をいくらに設定するかは、この点を踏まえて判断する必要があります。

原状回復費用をめぐるトラブル

退去時の原状回復は、貸主・借主双方の認識の違いからトラブルになりやすい場面です。

基本的な考え方として、通常の使用によって生じた損耗(通常損耗)や経年変化については、借主に原状回復義務はありません。この点は、2020年施行の改正民法によって民法621条に明文化されました。これらの費用は賃料に織り込まれているものと整理されるためです。一方、借主の故意・過失や善管注意義務違反による損傷については、借主が費用を負担することになります。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が実務上の目安として広く参照されており、経過年数に応じた減価(残存価値)の考え方も示されています。事業用物件についてはガイドラインが直接適用されるわけではありませんが、判断の参考にされることがあります。

貸主側として重要なのは、契約書における特約の設計です。通常損耗についても借主負担とする特約は一律に無効というわけではありませんが、有効と認められるためには、その旨が契約書に明確に記載され、借主が内容を認識して合意していることが必要とされています。曖昧な記載では特約が無効と判断されるリスクがあるため、契約書段階での確認が欠かせません。

あわせて、借主が個人である場合には、その特約が消費者契約法10条により無効とされる可能性も検討しておく必要があります。借主の原状回復義務を過度に加重する内容であれば、明確に合意されていたとしても効力が否定されることがあります。

また、入居時と退去時の物件状態を写真等で記録しておくことは、後の紛争において決定的な証拠となります。

不動産売買・建築請負に関するトラブルと対応方法

契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の追及と反論

2020年施行の改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと再構成されました。引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しない場合、買主は次の4つの手段をとることができます。

  • 追完請求(修補、代替物の引渡しなど)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約の解除

売主の立場からは、責任の有無や範囲について検討すべき点がいくつかあります。第一に、「契約の内容に適合しない」といえるかどうかは、契約書や重要事項説明書の記載、物件の価格・築年数、当事者間のやり取りなどから判断されます。築年数や価格に照らして契約が予定していた品質の範囲内にとどまるといえる場合には、そもそも契約不適合に当たらないと反論できる余地があります。

ただし、契約書に「現況有姿で引き渡す」との条項があることだけを理由に、当然に責任を免れられるわけではない点には注意が必要です。現況有姿条項は引渡しの態様を定めたものと解されるにとどまり、それ自体が契約不適合責任を免除する趣旨とまでは認められないと判断されることが少なくありません。免責を意図するのであれば、後述する免責特約を別途明確に置く必要があります。

第二に、期間制限です。種類または品質に関する契約不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、原則として責任を追及できなくなります(民法566条)。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知っていた、または重大な過失によって知らなかった場合には、この期間制限は適用されません。なお、この1年の通知期間は種類・品質に関する不適合についてのルールであり、数量不足や権利に関する不適合には適用されず、これらは一般の消滅時効の規律によることになります。

当事者双方が商人である取引では、さらに短い制限が働きます。買主は目的物を受領したときは遅滞なくこれを検査し、不適合を発見したときは直ちに通知しなければ責任を追及することができず、直ちに発見することができない不適合についても、受領の時から6か月以内に発見して通知しなければ同様です(商法526条1項・2項)。ただし、売主が不適合を知っていた場合には適用されません(同条3項)。事業者間の取引で請求を受けた場合には、最初に確認すべき防御線になります。

第三に、免責特約の有効性です。売主・買主がともに事業者である取引では、消費者契約法の適用がなく、買主が宅地建物取引業者である場合には宅地建物取引業法78条2項により同法40条の適用もないため、免責特約の自由度が高くなります。これに対し、宅建業者が売主で買主が個人の場合には、同法40条により、通知期間を目的物の引渡しの日から2年以上とする特約を除いて、買主に不利な特約は無効とされます。

また、新築住宅については住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分について、引渡しから10年間の担保責任(契約不適合責任)が定められており、これに反する買主に不利な特約は無効です(同法94条、95条)。

買主側から責任を追及する場合も同様に、不適合の内容と原因を技術的に特定し、それを裏付ける証拠を確保することが出発点となります。建物の場合は建築士等の専門家による調査が必要になることも多く、早期の着手が求められます。

なお、不動産売買に特化したトラブル類型と、売主側の具体的な対応手順については、別記事「不動産売買トラブルの事例と対処法」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

売買代金の未払い・決済トラブル

売買代金が支払われないまま引渡しが先行してしまうと、回収は一気に難しくなります。

契約段階での予防策として、所有権移転登記と代金決済を同時に行う「同時履行」の設計、手付金の適切な設定、期限の利益喪失条項や違約金条項の明記などが挙げられます。分割払いを認める場合には、抵当権の設定や所有権留保など、担保の確保を検討すべきです。

すでに未払いが生じている場合は、相手方の資力や資産状況を踏まえて、催告・契約解除・訴訟提起の方針を決めます。相手方が資産を処分するおそれがある場合には、訴訟に先立って仮差押えを行い、回収原資を確保する手段も有効です。時間の経過とともに回収可能性は低下するため、早期の判断が重要になります。

建築請負に特有の論点

建築工事の請負契約は、仕事の完成を目的とする契約であり、売買とは異なる規律が働きます。発注者(注文者)の立場で問題となりやすい論点を整理します。

まず施工不良については、請負人も契約不適合責任を負い、注文者は補修などの追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約の解除を求めることができます。ただし、契約不適合が注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたものであるときは、原則としてこれらの請求をすることができません(民法636条)。設計や仕様を発注者側が指定していた事案では、この点が争点となります。

期間制限は売買と同様の構造です。注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しなければ、責任を追及できなくなります(民法637条1項)。請負人が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この制限は適用されません(同条2項)。もっとも、建設工事の請負では民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款などの標準約款が用いられることが多く、約款独自の期間や手続が定められている場合があります。まずは適用される約款の確認から入る必要があります。

工期の遅延については、契約書に遅延損害金の定めがあればそれに従うことになります。定めがない場合は債務不履行として損害の賠償を請求することになりますが、事業計画への影響を金額として立証することは容易ではありません。契約段階で1日あたりの違約金を定めておくこと、あわせて工期変更が認められる事由(天候、近隣対応、追加変更工事など)とその手続を明記しておくことが、実務的な備えになります。

なお、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除することができます(民法641条)。計画変更などにより工事を中止する場合の選択肢ですが、賠償すべき損害には請負人が仕事を完成していれば得られたはずの利益も含まれるため、実際の負担は小さくありません。中止を検討する段階での試算が必要です。

仲介業者との紛争・仲介手数料の問題

不動産取引では、仲介業者の説明義務違反が争点となることがあります。宅地建物取引業者には重要事項説明義務が課されており、物件の権利関係、法令上の制限、インフラの整備状況、心理的瑕疵に関する事項などについて説明が求められます。

説明に不備があり、それによって買主・借主が損害を被った場合には、仲介業者に対する損害賠償請求が問題となります。逆に、事業者側として説明義務違反を主張された場合には、説明の内容と範囲、当該事項が説明義務の対象といえるか、損害との因果関係があるかといった点から反論を検討することになります。

仲介手数料についても、契約が成立しなかった場合の報酬請求の可否、両手取引における利益相反、専任媒介契約の解除に伴う費用償還など、争いになりやすい論点が存在します。

土地・借地・所有権に関するトラブルと対応方法

境界確定をめぐる紛争

土地の境界が不明確なままでは、売却時に買主が購入をためらう原因となり、資産の流動性が損なわれます。また、隣地所有者との間で長期にわたる紛争に発展することもあります。

境界の問題は、「筆界」(登記された土地の区画としての境界)と「所有権界」(実際の所有権が及ぶ範囲)の2つを区別して考える必要があります。筆界は当事者の合意によって動かすことができない公法上の境界であり、これを確定するには筆界特定制度(法務局の手続き)や境界確定訴訟という方法があります。一方、所有権界については、当事者間の合意や時効取得などによって決まるため、和解による解決も可能です。

どちらの問題なのかによって取るべき手続きが変わるため、初期段階での見立てが重要です。土地家屋調査士による測量が前提となることも多く、専門家との連携が求められる分野です。

共有不動産の分割(共有物分割)

相続などによって不動産が共有状態になると、単独では売却も大規模な改修もできず、資産が事実上凍結されてしまいます。

共有状態を解消する手段が共有物分割です。まずは共有者間の協議によって、現物分割(土地を分筆して分ける)、賠償分割(一人が取得し、他の共有者に持分の価格を支払う。全面的価格賠償ともいいます)、換価分割(売却して代金を分ける)のいずれかを選択します。協議がまとまらない場合には、共有物分割訴訟を提起することになります。

ここで注意が必要なのが、相続によって生じた共有(遺産共有)の扱いです。遺産分割が未了の段階では、その解消は原則として家庭裁判所の遺産分割手続によることになり、地方裁判所の共有物分割訴訟では処理できません。手続の選択を誤ると、申立て自体が無駄になってしまいます。相続がからむ共有については、まず遺産分割が済んでいるかどうかの確認が出発点です。

2023年施行の改正民法では、所在等不明共有者がいる場合にその持分を取得・譲渡する制度(民法262条の2、262条の3)や、共有物の管理に関するルールの明確化が図られ、共有状態の解消がしやすくなりました。あわせて、相続開始の時から10年を経過した遺産共有については、他の共有持分と併せて共有物分割訴訟の中で処理することが可能となりました(民法258条の2第2項)。長年放置されてきた共有不動産についても、以前より現実的な選択肢が増えています。

借地に関するトラブル

建物の所有を目的として土地を貸している場合には借地借家法が適用され、借地権者は建物賃貸借の場合と同様、あるいはそれ以上に手厚く保護されます。地主側の立場では、次の場面で法的な判断が必要になります。

まず、契約期間が満了しても、借地権者が更新を請求し、または土地の使用を継続している場合には、原則として契約は更新されます。地主が更新を拒絶するには正当事由が必要であり、その判断では、双方の土地使用の必要性、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、そして立退料の提供などが総合的に考慮されます。

さらに、更新が認められずに借地契約が終了した場合、借地権者は地主に対し、借地上の建物を時価で買い取るよう請求することができます(借地借家法13条)。これは相手方の承諾を要しない形成権であり、請求がなされれば地主の意思にかかわらず売買が成立したのと同じ効果が生じます。更新拒絶が認められれば更地で土地が戻ってくる、という前提で計画を立てると、想定外の資金負担が生じることになります。

また、借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡する場合や、増改築禁止の特約がある土地で増改築を行う場合には、地主の承諾が必要です。地主が承諾しないときは、借地権者は裁判所に対して承諾に代わる許可を求めることができます(借地非訟手続)。この手続の中で承諾料の額や条件が定められるため、地主としては、手続において適切な条件を主張していくことになります。

地代についても、建物賃貸借の賃料と同様に増減額請求の制度があり(借地借家法11条)、協議が調わない場合には調停を経て訴訟で争うことになります。

近隣トラブル(越境・落雪・騒音など)

隣地からの越境(樹木の枝、建築物の一部、塀など)、騒音、悪臭、ゴミの放置といった近隣トラブルは、法的にはそれぞれ異なる構成で対応します。

たとえば越境については、2023年施行の改正民法により、隣地の竹木の枝が境界を越えている場合に、催告しても切除されないときなどは自ら切除できる旨が明文化されました。また、境界付近での工事のために隣地を使用する権利についてもルールが整理されています。

騒音や悪臭については、それが社会生活上受忍すべき限度(受忍限度)を超えているかどうかが判断の中心となります。測定記録や発生状況の記録など、客観的な資料の積み重ねが不可欠です。

北海道においては、屋根からの落雪による損害が特徴的な問題です。落雪により隣家の建物や車両が損傷した場合、建物の設置または保存に瑕疵があったと評価されれば、土地工作物責任(民法717条)に基づく損害賠償責任が問題となります。落雪の危険が予見できたにもかかわらず雪止めの設置や除雪といった対策を怠っていた場合には、瑕疵が認められやすくなります。

ここで押さえておきたいのが、責任を負う主体の構造です。土地工作物責任は、第一次的には建物の占有者が負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに、所有者が責任を負うという二段構えになっています。そして所有者の責任は無過失責任であり、注意を尽くしていたという反論は認められません。賃貸物件の場合、占有者は賃借人、所有者はオーナーですので、賃借人が必要な注意を尽くしていれば、最終的な責任はオーナーに帰することになります。

したがって、物件を所有・管理する立場としては、雪止めの設置や落雪範囲の確保、冬季前の点検と除排雪の実施、そしてそれらの記録を残しておくことが、そのままリスク管理につながります。管理会社や賃借人との間で除排雪の責任分担を契約書に明記しておくことも、あわせて検討すべき事項です。

不動産トラブルを弁護士に依頼するメリット

交渉の窓口を一本化し、経営に集中できる

不動産トラブルの相手方は、入居者や隣地所有者など、感情的な対立が生じやすい関係にあります。当事者同士のやり取りが続くと、主張の応酬になって解決から遠ざかるだけでなく、対応そのものが大きな負担となります。

弁護士が代理人として窓口となることで、相手方との直接のやり取りから解放され、本来の事業運営に集中できます。また、法的な根拠を示しながら交渉することで、相手方も現実的な着地点を検討しやすくなり、任意交渉の段階で解決に至るケースも少なくありません。

証拠の確保と法的見通しを早期に立てられる

不動産トラブルでは、時間の経過とともに証拠が失われていきます。建物の不具合は補修されてしまえば立証が困難になり、賃借人とのやり取りも記憶が曖昧になっていきます。契約不適合責任の通知期間のように、期間を経過すると権利行使自体ができなくなる場面もあります。

早い段階で弁護士に相談いただければ、何を証拠として残すべきか、どの手続きをいつまでに取るべきかを整理できます。あわせて、請求が認められる見込みや回収可能性についても現実的な見通しを立てられるため、「争うべきか、早期に和解して損失を確定させるべきか」という経営判断の材料が得られます。

訴訟・強制執行まで一貫して対応できる

交渉で解決しない場合、調停・訴訟・強制執行へと手続きが移行します。建物明渡しであれば、訴訟提起から判決取得、さらに明渡しの強制執行まで、それぞれ異なる手続きを積み重ねる必要があります。債権回収であれば、仮差押えによる保全から始めるべき場面もあります。

これらを見通したうえで初動から一貫して対応することで、無駄のない手続き選択が可能になります。途中から弁護士が関与する場合と比べ、結果的に費用と時間の双方を抑えられることが多いのが実情です。

トラブルを未然に防ぐための予防法務

賃貸借契約書・売買契約書のリーガルチェック

不動産トラブルの多くは、契約書の記載が不十分であることに起因しています。

賃貸借契約であれば、賃料の支払方法と遅延損害金、解除事由の明記、原状回復の範囲に関する特約、連帯保証人の極度額、契約終了時の残置物の取扱いといった条項が実務上の要点となります。加えて、将来の建替えや自己使用を見込んでいる物件については、契約の類型として定期建物賃貸借を選択するかどうかの判断も、この段階で行うべき事項です。売買契約であれば、契約不適合責任の範囲と期間、決済と登記の同時履行、違約金条項などが挙げられます。

市販の雛形や業界団体の標準約款をそのまま使用しているケースも多く見受けられますが、物件の性質や取引の実情に合わせた調整をしておくことで、紛争が生じた際の立場が大きく変わります。契約書のチェックは、トラブル対応にかかる費用と比べればはるかに小さなコストで実施できる、最も費用対効果の高い予防策です。

滞納発生時の初動フローを社内で整備する

賃料滞納への対応は、担当者の判断に委ねるのではなく、社内のルールとして定めておくことをお勧めします。

たとえば「滞納発生の翌営業日に電話連絡」「10日経過で書面督促と保証会社への通知」「1か月経過で連帯保証人へ通知」「2か月経過で弁護士に相談」といった具合に、経過日数に応じた対応を定型化しておけば、対応の遅れや漏れを防げます。あわせて、対応記録のフォーマットを整えておくことで、後の法的手続きに必要な証拠が自然と蓄積されます。

複数の物件を管理している事業者ほど、この仕組み化の効果は大きくなります。

顧問弁護士を活用した継続的なリスク管理

不動産事業では、契約書の確認、入居者からの申し出への対応、近隣からの苦情、修繕をめぐる交渉など、日常的に法的判断を要する場面が生じます。

顧問弁護士がいれば、こうした場面で「これは法的に問題があるか」「この対応で進めてよいか」を都度確認でき、判断の誤りによって問題が拡大することを防げます。事業の内容や物件の状況を継続的に把握している弁護士であれば、相談の際に一から説明する必要もなく、迅速な対応が可能です。

トラブルが起きてから相談するのではなく、起きる前から相談できる体制を整えておくことが、結果として最も損失の少ない選択となります。

不動産トラブル解決までの流れと弁護士費用

ご相談から解決までのステップ

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 初回相談:状況をお伺いし、法的な論点と見通しを整理します。契約書、登記事項証明書、相手方とのやり取りの記録など、関連資料をお持ちいただくとより具体的なご説明が可能です。
  2. 方針の決定・受任:交渉から始めるか、直ちに法的手続きに進むか、想定される期間と費用を含めてご説明したうえで方針を決定します。
  3. 交渉:代理人として相手方と協議します。内容証明郵便の送付や、条件の調整を行います。
  4. 法的手続き:交渉で解決しない場合、調停・訴訟・保全手続きなどに移行します。
  5. 解決・執行:和解または判決により解決します。相手方が任意に応じない場合は、強制執行によって権利を実現します。

弁護士費用の考え方

弁護士費用は、相談料・着手金・報酬金・実費という構成が一般的です。着手金は依頼の段階でお支払いいただく費用、報酬金は解決結果に応じてお支払いいただく費用です。

不動産トラブルの場合、対象となる不動産の価額や請求金額を基準に算定することが多く、事案の内容によって異なります。顧問契約を締結いただいている場合は、個別案件の費用について優遇を設けることが一般的です。

いずれの場合も、ご依頼いただく前に費用の見込みを明示し、ご納得いただいたうえで進めますので、費用面のご不安があれば遠慮なくお尋ねください。

札幌の不動産トラブルはすがの総合法律事務所へ

北海道特有の不動産事情に対応

北海道の不動産には、他地域とは異なる事情があります。屋根からの落雪や除排雪をめぐる責任問題、凍結や凍上による建物・設備の不具合、冬季における明渡しや工事のスケジュール調整、そして地域によっては空室リスクや資産価値の下落といった課題です。

こうした地域固有の事情は、賃貸借契約の設計や、契約不適合責任をめぐる判断にも影響します。札幌に拠点を置き、道内の不動産事情を踏まえたアドバイスを行える点は、当事務所の強みです。

不動産事業者・オーナー側の視点でサポート

当事務所は、不動産オーナー様、管理会社様、不動産事業者様といった貸主・売主側の立場からのご相談をお受けしています。

トラブルへの対応は、法的に正しいかどうかだけでなく、事業として合理的かという視点が欠かせません。たとえば、法的には請求できる場合でも、回収可能性や費用対効果を踏まえれば早期に和解したほうがよいこともあります。当事務所では、法的な見解に加えて、経営判断に資する現実的な選択肢をご提示することを心がけています。

契約書の整備や労務問題と併せて、事業運営に関わる法務全般をワンストップでサポートできる点も、顧問先の皆様にご評価いただいているところです。

ご相談の予約方法

不動産トラブルは、初動の遅れが解決を難しくします。「まだ相談するほどではないかもしれない」という段階でも、お早めにご連絡ください。

ご相談はお電話またはウェブサイトのお問い合わせフォームから承っております。ご相談の際は、契約書、登記事項証明書、相手方とのやり取りの記録などをご用意いただけますと、より具体的なご説明が可能です。

札幌およびその周辺で不動産に関するお困りごとがございましたら、すがの総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

Last Updated on 2026年9月17日 by kigyou-sugano-law

ご相談のご予約はこちらから TEL:011-209-0200 受付時間9:00~17:00 すがの総合法律事務所 ご相談のご予約はこちらから TEL:011-209-0200 受付時間9:00~17:00 すがの総合法律事務所 メールでのお問い合わせはこちら