北海道の介護業に関する事故件数について
下記は北海道内の介護サービス事業者より札幌市へ提出された「事故等発生状況報告書」の報告件数を取りまとめたものです。(※札幌市保健福祉局 介護保険課データより、期間:令和2年4月~令和3年3月)
報告内容を見ていると、「誤薬(服薬忘れ含む)」が1番となっており、その後に「骨折」「打撲」などが続いています。
※引用元:令和3年度介護サービス事業者集団指導資料 札幌市保健福祉局介護保険課より
下記が詳細になります。
・誤薬:44%
・骨折:20%
・打撲:13%
・裂傷等:7%
・誤飲・誤食:5%
・無断外出:1%
・死亡:1%
・その他:8%
介護業を取り巻くトラブルリスクは、多岐に渡り、対策が必要です。
令和2年度は前年度と比較し75件減少しており、減少傾向にあります。
北海道の介護業に関するクレーム件数について
下記は札幌市介護保険課に寄せられた苦情相談の割合になります。
令和2年度の寄せられた苦情等の相談件数は326件となっております。(※札幌市保健福祉局 介護保険課データより)通所介護、訪問介護、居宅介護、訪問看護、短期入所生活、通処理は、グループホーム等様々なサービスの方がたに調査をした結果、下記が寄せられた苦情の内訳です。
※引用元:令和3年度介護サービス事業者集団指導資料 札幌市保健福祉局介護保険課より
下記が詳細になります。
・管理者等への対応:22%
・サービスの質:21%
・説明・情報不足:11%
・従業者の態度:10%
・具体的な被害・加害:6%
・契約・手続き:4%
・ケアプラン:2%
・利用者負担:2%
・その他:22%
割合の高い、「管理者等への対応」「サービスの質」「説明・情報不足」「従業員の態度」等については、ある程度のマニュアル化や、適切な指導、研修で防ぐことも可能です。
利用者の満足度だけではなく、従業員の満足度を上げるためにも、弁護士による研修、指導の活用をおすすめします。
介護業におけるトラブルについて
介護事業者の中でよくあるご相談のひとつに、「ハラスメント」に関するものがございます。
厚生労働省が発表する「介護現場におけるハラスメント対策」でもハラスメントへの対策方法や、介護現場におけるハラスメント対策の強化についても述べられています。
また、最近では「カスタマーハラスメント(カスハラ)」についても取り上げ、その防止のための方針の明確化等の必要な措置を講じることを推奨しています。
介護業では、スタッフ同士、またはスタッフと利用者との間で様々なトラブルが発生します。これには、クレーム、ハラスメントなどが含まれます。これらの問題を効果的に解決するには、法的知識と対応スキルが求められます。
下記に介護業でよくあるトラブルについて解説をさせていただきます。
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クレーム対応
介護業務において、利用者やその家族からのクレームは避けられません。適切なコミュニケーションと法的知識が、信頼関係の構築と問題解決の鍵です。クレームには、速やかで適切な対応が求められます。
正当な理由があるクレームであれば、事業所として真摯に謝罪をし、今後の業務の改善を行う必要があります。
しかし、正当な理由のない不当な内容のクレームや、クレームの手段が社会的に相当な範囲を超えるようなものについては、対応を慎重に検討する必要があります。
不当なクレームにより従業員が疲弊し、心身の健康を害してしまうことを避けなければいけません。この点については、次に述べるカスタマーハラスメントにおいて具体的に説明します。
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カスタマーハラスメント
カスハラ(カスタマーハラスメント)は、利用者やその家族による介護スタッフへの過度な要求や非難を指します。
令和元年6月に、労働施策総合推進法等が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。
この改正を踏まえ、令和2年1月に、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が策定され、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取組を行うことが有効である旨が定められました。
事業主にはスタッフの健康と安全を確保する責任(安全配慮義務)がありますので、従業員がカスハラの被害に遭わないように配慮し、被害に遭った従業員への対応を適切に行う必要があります。事業主が適切な対応をしないと、従業員の離職を招いてしまうことになります。
また、安全配慮義務に違反し、従業員が精神疾患等の損害を受けた場合、事業主が損害賠償責任を負う可能性があります。
『指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日)(厚生省令第三十七号)』の第9条では、「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。」と規定されています。
しかし、カスハラの程度が重大な場合には、介護利用サービス契約の解除を検討することも考えられます。もっとも、解除には正当な理由が必要ですので、カスハラの証拠等を確保して法的な検討を十分にすべきです。
介護業におけるトラブルをハラスメントだけでなく、ハラスメントから派生する「人材定着問題」や、クレーム対応、労務管理の不備による残業代請求トラブルなど多岐に渡ります。当事務所では介護事業者向けに顧問契約を行うプランもございますので、まずは当事務所までご相談ください。
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参考・引用元について
・札幌市保健福祉局 介護保険課(事業指導担当)介護サービス事業者集団指導資料
https://www.city.sapporo.jp/kaigo/k200jigyo/documents/kyoutuuzikou2021.pdf
・厚生労働省 介護現場におけるハラスメント対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html
Last Updated on 2024年7月30日 by kigyou-sugano-law