65歳までの継続雇用と法規制について
労働契約法においては、通常、労働者の雇用契約は定年に達した時点で自動的に終了します。しかし、近年の少子高齢化の背景から65歳までの継続雇用を促進する法規制が整備されています。
高年齢者雇用安定法は、高齢者の雇用継続を支援するために定められた法律です。この法律には、雇用主に対して高齢者の再雇用を促すための雇用確保措置が定められています。具体的な措置としては、定年後再雇用を積極的に行うことや、高齢者に対する職場環境の改善などが挙げられます。
高年齢者雇用安定法の目的は、高齢者が働き続けることによる社会的な利益を追求することです。そのため、雇用主は定年後再雇用の意義や効果を理解し、適切な措置を講じることが求められます。
多くの企業では、法律の要請する雇用確保措置として、「継続雇用制度」を採用しています。具体的には、対象者が定年に達すると「退職」扱いとなり、その上で「再雇用」する制度を採用している企業が多いです。
基本的に、就業規則等に記載されている欠格事由に該当しない限り、継続雇用を希望する者全員を再雇用することが義務付けられています。
再雇用制度の雇用形態には、正社員や契約社員、パートタイム社員、派遣社員などがあります。
定年後再雇用社員の更新拒否の可否について
定年後再雇用制度における雇用期間は、多くの企業が1年間としていますが、従業員の希望がある場合は原則として65歳まで雇用契約を更新しなければなりません。
労働契約法の「雇止め法理」の規制がありますので、更新拒否は、正当な理由がない限り認められません。
更新拒否の理由は合理的でなければなりません。つまり、労働者の能力や行動に問題があるなど、正当な理由が存在しなければ更新拒否は違法とされます。また、適正な手続きを踏むことも重要です。会社側は労働者に対して、更新拒否の理由や根拠を明示し、改善提案などを協議しなければなりません
企業に求められる高年齢者雇用への注意点
正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくし、労働者がどのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるよう、いわゆる「同一労働同一賃金」を実現するため、2020年4月1日に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、2021年4月1日からは中小企業にも適用されています。
同法8条では、通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されていますので、定年後再雇用された従業員と一般の従業員との間についても、不合理な待遇差を設けることは禁止されます。
定年後の再雇用では給与が下がることが一般的ですが、「再雇用後の基本給の大幅減額が違法である」との主張について争われた事件では、最高裁は基本給の性質や支給目的を踏まえて労働条件の相違を判断するように判示しています。(令和4年(受)第1293号地位確認等請求事件、令和5年7月20日判決 詳しくはこちらから)
再雇用後の基本給を大幅に減額することは違法となる可能性があるので、注意が必要です。
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高年齢者雇用については弁護士にご相談ください
定年後再雇用社員の雇止めや更新拒否は、労働者にとって大きな影響を及ぼす問題です。そのため、高年齢者雇用に関するトラブルが発生した場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法的知識と専門的な視点を持ち合わせており、労働者の権利や適正な対応策をアドバイスすることができます。具体的には、雇用契約の解釈や法的根拠の解説、交渉や調停の支援など、幅広いサポートを提供します。
また、弁護士は労働者の権利を保護するだけでなく、雇用主の立場からも助言を行うことがあります。労働者と雇用主の間での紛争を円満に解決するために、公正な立場で対応することが求められます。
最後に、定年後再雇用社員の雇止めや更新拒否に関わる問題は該当者の事情や労働契約の内容によって異なるため、一概に決めつけられるものではありません。企業法務に精通した弁護士に相談いただくことで、会社ごとの状況に適した具体的な解決策や対応方法を弁護士よりご提案することが可能です。
雇用契約書、就業規則においての記載内容で、会社が思わぬリスクに直面してしまう可能性が有ります。
問題が発生している方だけではなく、予め発生し得るリスクについては防ぐことも可能な場合もあります。現在の雇用契約書、就業規則などに不安を抱えていらっしゃる方、高齢者の雇用についてトラブル、不安を抱えていらっしゃる方はまずは弁護士にご相談ください。
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Last Updated on 2024年2月12日 by kigyou-sugano-law